皆さんは、今年に起きた内外のニュースの中で一番印象に残っているものは何でしょうか?私は5月9日にモスクワで開かれた「対独戦勝60周年式典」での映像シーンでした。この式典には戦勝国と敗戦国という、異なる歴史観を持つ53ヶ国の首脳が列席しました。
当初ドイツや日本においては、戦勝国の勝利の祝典となるこの式典の参加を疑問視する声も挙がりました。しかし、ロシア側のスローガン「記憶と和解」に込められた意味を善意に解釈して出席を決めました。
しかし、式典はやはりドイツや日本が危惧したように「和解」を演出すると云うよりは、戦勝国の威信を誇るような形で始まりました。先ず席順ですが、戦勝国である米露のブッシュ、プーチン大統領夫妻を中心に、中国・フランスの首脳が左右に着席しました。
敗戦国のドイツや日本、イタリアは端の方に席次を与えられていました。実はこの式典参加に一番熱心だったのは共産中国の胡錦濤国家主席でした。彼はこの式典で戦勝国側の一員としての立場を世界中に誇らしげに示そうとしていたのです。
しかし、この胡錦濤国家主席の思惑はものの見事に失敗しました。式典が終わって首脳陣が一斉に席を立ち上がった時、小泉首相が足早に米国のブッシュ大統領に近づきました。胡錦濤国家主席などには目をくれず、満面の笑みでブッシュ大統領に握手を求めたのです。
ブッシュ大統領の方もこれまた満面の笑みを浮かべて、この小泉首相の握手に応えました。ドイツの首相の笑顔も両者の間で写し出されていました。これに対して次に映し出された、胡錦濤国家主席の顔は仏頂面そのものでした。
世界はこの戦勝国の60周年式典の中で、戦勝国米国と敗戦国日本の固い絆を見せ付けられたのでした。プーチンや胡錦濤が頭に描いた自らの権威を世界に示そうとした、その思惑は完膚なきまでに砕かれたのでした。
さて、右翼・民族派は戦勝国による戦後の支配体制をYP体制と呼び、この「YP体制粉砕」を闘いの最大のスローガンとしてきました。YP体制とはルーズベルト、チャーチル、スターリンの米英ソ三巨頭が会して1945年2月に決めた「ヤルタ協定」を指しますが、このヤルタ協定によってソ連の対日参戦やヨーロッパの分割が秘密裏に行われたといわれて来ました。
このヤルタ協定によって戦後の世界は呪縛されてきたと言っても良いでしょう。しかし、この「ヤルタの合意」について当事者の米国のブッシュ大統領は「歴史上最大の誤り」と新たな歴史観を示したのです。これは重大なニュースでした、先人の功績を否定したのです。
戦勝国のロシアや中国はYP体制の正当性に固執しますが、ブッシュ米国大統領はYP体制に自ら終止符を打つ考えを明らかにしました。それもこのロシアの式典に出席する2日前にラトビアの首都リガで演説、ソ連によるバルト併合や東欧支配を「史上最大の過ちの一つ」として戦勝国の責任を認めました。
「ヤルタの合意」はソ連の対日参戦とそれと引き換えに北方領土を与える密約もこの時されたと云われており、小泉首相がブッシュ大統領にこの時感謝の意を込めて握手を求めたのは当然の事だったのです。たぶん小泉首相は事前にこのブッシュ大統領から、この「ヤルタ合意」を否定する考えを聞いていたのかも知れません。
右翼・民族派が戦後一貫して叫んできた、「YP体制」はブッシュ大統領によって否定され、その根拠を失いました。後はこの「YP体制」の正当性に固執するロシアや共産中国に対する新たな戦いの陣地を構築しなくてはなりません。いつまでも反米を唱える愚を捨てる時なのです。
今年は本当にありがとう御座いました。よい新年をお迎えください。なお、正月もブログは休みません。迫り来る戦争の危機の中で、祖国は存亡の岐路に立たされています。休み返上で共に将来を語り合いたいと思います。
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